ふつうの日記が読みたい

ふつうの日記が読みたい

じいちゃんの3年日記

思い出を、受け継ぐ時間

近所に住むばあちゃんを、病院に連れていくたび。最近は部屋に招かれて、棚の上のものを取ったり、使わなくなったカバンをもらったりしている。

正直にいうと、使えないような古くさいものも多いのだけど、「くれる」という好意と、そこに詰まった思い出が愛おしすぎて、私はいつもひとつふたつ、もらって帰る。

「ポマードの匂いだ」っていつか誰かが言っていた「じいちゃんの匂い」がする奥の間には、正確には数えていないのだけど、10冊以上の3年日記が置いてあった。

25年前。妹が生まれた日の日記。

「あ、これは妹が生まれた日だ」そう声に出したら、ばあちゃんが「読んでみられ」と言って取り出して、私はそっと「じいちゃん、ごめんね」って心の中で言いながらその日記を開いた。

夜勤。

帰ってひとねむりして、病院に行く。

次女三女。元気であれ。

たった3行。でも、その3行が愛おしかった。

そして、その右の日付には「一日こたつで寝ていた。」の一言。

なんでもない、本当になんでもない日記。だけど、今はもう私のことも忘れてしまったじいちゃんはもちろんのこと、きっと他の誰に聞いても、そんな何気ない日常の話なんてわからない。

だけど、確かにそこに時間が流れていて、そこに私たちは生きて来たのだと思うと、なんか、ものすごく「いいな」と思った。

それで、その日にその足で、3年日記を買ったけれど、飽きっぽい私は、結局8日で書くのをやめてしまった。

それでも私は、ふつうの日記が書きたいし、ふつうの日記が読みたいと思う。

「ふつうの日記」への“需要”

ブログが流行り始めた時に、と散々言われていたブログのルールは、

一般人の日記など誰も読みたくないのだから、何かに特化しなくてはいけない。

役に立たなければいけない。

オチやネタがなければいけない。

というものだった。

だけど、めぐりめぐって。今こそふつうの日記が読みたいと、私は思う。

魔法をかける編集 / 藤本智士さん

あなた自身がどんな服を着て、何を身につけ、どんなものを食べ、誰と付き合い、何を話し、どんな行動をとるか。

その一挙手一投足が、あなた自身からの発信であり、それはもはや、あなた自身がメディアなんだということです。

そんな風に始まる本を読んだ。

[amazon asin=”B078H1C5BV” kw=”魔法をかける編集”]

「編集」を広い意味に捉え、未来のビジョンを描いて変化させていくチカラ。

最近勧めていただいて、すべての章が面白くて、興味深くて、勇気が湧いて、どんどん読み進めた。

こんなに早く読めた本は、久しぶりじゃないかな。

f:id:hommy_jp:20170826233846j:plain

地域おこし協力隊に応募した、過去の私

ローカルメディアの話もたくさん出てくるこの本を読んで行く中で、1年ほど前に「地域おこし協力隊」に応募したことを思い出した。

そして、その違和感と、その時に描いていた未来へのビジョンも。

地域おこし協力隊のOBたちが書いたブログには「ここはこんなに素晴らしいところですよ」ってことがたくさん書いてあった。

だけど、その人たちが普段何をして、何を考え、どんな「ふつう」の毎日を送っていたかは全然わからなかった。どんな「日常」を送れる世界なのかは、全然書いてなかったのだ。

それはなにも「地域おこし」に限ったことではない。

その地域の公式サイトを見れば、他の地域から人口をひとりでも確保しようと“外に向けた発信”が目立つ。

肝心の、そこに住む人たちが欲しい情報は、最新なのかもわからないような事務連絡だけで、どういう暮らしができるのか、どういう生活を送れるのか、どういう日常の幸せを感じられるのかの、イメージがまるで湧かない。

結局私は、その地域がいい!っていう根拠もこの街を出たい!っていう理由も見つけ出せず、今も生まれた街で暮らしている。(とかってカッコよく言ってるけど、地域おこし協力隊の面接は、フツーに落ちた。)

私の、くだらなくて愛しい日常

初体験のBGMは、「なんでも鑑定団」だった

私の初体験は後ろに、当時は島田紳助さんがまだ司会だった「なんでも鑑定団」の音が聞こえていた。

「イチ、ジュウ、ヒャク、セン、マン…」

これって、私にとってはものすごいエモいことなんだけど、都会の人だとか、今思春期の子達には、その感覚ってもしかしたら、ぜんぜん理解できないのかもしれない。

「なんでも鑑定団」は私たちにとって、土日の昼に何度も再放送されている番組だ。というか、土日の昼は「なんでも鑑定団」か「相棒」しかほぼ放送されていない。(土曜も日曜も放送してて、下手したら1日に2度以上放送されているような気がする。)

そんな昼下がりに、社会人の彼に合わせるように背伸びしたラブホテル。罪悪感と好奇心と冷静を装う私。

最初はそれこそムード作りもなされてたはずだけど、なんやかんや失敗して、中断して、コンビニのサンドイッチを食べた。

お風呂に入って、温まった身体に「今ならできるかも!」って2度目のチャレンジには、なし崩しのままで。

だから、付けっ放しのテレビで流れてたのが「なんでも鑑定団」だった。そういうこと。

まぁなんていうか、それは日常というよりは特別な日だったのだけど、「なんでも鑑定団」=「土日の昼」という日常がなければ、この雰囲気はきっと伝わらない。

(夜だったとしても、BGMはなんでも鑑定団っていうのはなんとなくサイテーな感じは伝わるかもしれないけれど。)

ここでこうして生きてます

なんか、普通の日記が読みたい。

「こたつで寝てた」でも、そこにみかんはあったのかとか、「テレビを見てた」は何を見てたとか

あとじいちゃんの日記では「苗を植えた」って書いてあるだけで、この時期はそういうことをするんだな、していたんだな、するといいんだな、という発見がある。

そんな風に、誰かにとっての日常は、私にとってはトクベツだったり、時間が経てば輝いたりする。

そんな日常に触れて生きたい。寄り添いたい。そんな場所を、なんとなく思い描いている。

思ったことカテゴリの最新記事